2012年8月17日金曜日

山中利子詩集『空に落ちているもの あたしのためいき』



  わたしとシロくん
  
シロくんが わたしのお兄ちゃん    
シロくんは玄関の敷物(しきもの)の上にいる  
ごわごわした白い毛のむねにもたれて わたしは眠る  
母さんの夢を見る
母さんは どこかでわたしを見ている
 
どこなのか 探し続ける  
 暗い森   
大きな木
   
 藪をくぐり 明かりをさがして  
 母さん 母さん  と呼び続ける  
 探しても探しても 見つからない  

 藪の中で  光るものがわたしを見ている  
 気がつくと  シロくんが わたしをぺろぺろとなめている
 光っていたのは  シロくんの茶色の目    
 目を覚ましたわたしは  シロくんのしっぽと遊ぶ  
   パタリ パタリ     
 動くしっぽに狙いをつけて   
腰を高く上げて  おしりをふって
 スリッパの陰から  
 (ねら)い定めて飛び(かか)る    

 シロくんはゆっくりと   
 何時までも
 パタリ パタリ   
 しっぽを振り続ける (わたしはサクラから)
 

 




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