2021年7月15日木曜日
片岡美沙保詩集『ねこのまえあし』
2021年5月27日木曜日
現代こども詩文庫 2 内田麟太郎詩集
現代こども詩文庫 菊永謙責任編集
第二回配本 現代こども詩文庫 2 内田麟太郎詩集
発行日 2021年5月25日
ISBN978-4-905036-26-5 C0392 定価1320円(本体1200円+税)
著者 内田麟太郎 企画・編集 菊永 謙 カバー絵 大井さちこ
2021年4月29日木曜日
野田沙織さん 三越左千夫少年詩賞を受賞!
四月中旬、日本児童文学者協会の関係者様から電話があり、今年度の三越左千夫少年詩賞に野田沙織さんの詩集『うたうかたつむり』が受賞したと伝えられました。
野田さんの詩集『うたうかたつむり』は数年前から出版のご相談をいただいていたのですが、昨年の3月から詩集の編集が始まり、初秋には刊行の予定でした。画家の浜田洋子さんに挿絵などをお願いして編集を進めていた矢先、7月7日に野田さんは病気で41歳の若さで急逝されました。ご家族の意向もあり、12月に詩集を刊行いたしました。
野田沙織さんは学生時代から詩作をはじめ、300名ほど応募があった詩のコンテスト「詩の少年詩の少女」で見事に入賞し、その後詩誌「マグノリアの木」「みみずく」などで詩作品を発表し、また児童文学誌「ネバーランド」「少年詩の学校」「ざわざわ」などに詩やエッセイを発表されていました。詩作において詩の言葉を吟味し、選び抜くことを徹底されていたことが印象的です。
詩集原稿をまとめられた時に、その暗さについてメールで触れると「詩のダークさについては…自分では毒の部分も大切にしながら、救いのない書き方はしていない」とお返事をいただいたのがいまだ記憶にあたらしいです。昨年の2月のことでした。
もっと早くお元気なうちに詩集が刊行できていたらと惜しまれますが。むしろこうして一冊の詩集として残せたことを喜ぶべきかと思います。しかも名誉ある三越賞を受賞されたことを版元としてとても嬉しく思っております。野田さんのごめいふくをお祈りします。
2021年2月26日金曜日
現代こども詩文庫 1 山中利子詩集
現代こども詩文庫 菊永謙責任編集
第一回配本 現代こども詩文庫 1 山中利子詩集
発行日 2021年2月25日 初版第一刷発行 定価本体1200円+税
著者 山中利子 企画・編集 菊永 謙 カバー絵 大井さちこ
ISBN978-4-905036-24-1 C0392
現代こども詩文庫は、子どもの読者から広く大人まで楽しめる詩と詩人の全体像を明らかにし、広く世に問うものである。基本的には詩人の詩・童謡の選集として児童文学評論家菊永謙が企画、編集し、解説を付したものである。
すぐれた詩篇の数々、童話、そしてエッセイ・評論等を収録し、さらに詩人について他者からの重要な批評の再録、オリジナルの解説を収載し、詩人の裡に輝く児童文学の姿を浮き彫りにしたい。
著者 山中利子(やまなか としこ)
一九四二年一月二十一日 茨城県土浦市に生まれる。
少女時代、「いづみ」「文芸首都」などに詩を投稿。国立療養所東京病院付属高等看護学校卒業後看護師として働く。
一九九八年、詩集『だあれもいない日―わたしの おじいちゃん おばあちゃん―』(リーブル)で第三回三越左千夫賞受賞。二〇〇八年、詩集『遠くて近いものたち』(てらいんく)で第27回新美南吉児童文学賞受賞。日本児童文学者協会会員。
著書に『早春の土手』、『空にかいた詩』、『まくらのひみつ』、『こころころころ』、エッセイ集『かわいや風の子―重症心身障害児訪問看護便り―』、童謡詩集『ガードレールの歌』ほか多数。
2020年12月7日月曜日
『うたうかたつむり』詩:野田沙織 絵:浜田洋子
『うたうかたつむり』詩:野田沙織 絵:浜田洋子
2020 年12 月25 日 発行 四季の森社 定価:本体1200円+税
ISBN978-4-905036-25-8 C0092
著者略歴 野田沙織(のださおり)
一九七九年三月二日、東京生まれ。福岡で育つ。九州大学文学部卒業。在学中に「詩の少年・詩の少女」入賞。卒業後は図書館司書として働く。同人誌「マグノリアの木」「みみずく」に参加。児童文学誌「ネバーランド」「ざわざわ」「少年詩の学校」などにも詩やエッセイを発表。二〇二〇年七月七日、病気にて急逝。享年四十一歳。
本集から
かたつむり
かしゃ
足の下で こなごなになった
それは きのうここにいた
かたつむり
だったかもしれない
そんなにも
たよりない殻で
きっぱりと
身をまもっていたのに
ごめんなさい
かしゃ
とりかえしのつかない
しずかな
音だった
らったった
アライグマも
ワライグマも
ワルイクマも
あつまった
わになった
らったった
やくそく
ならない口笛
ふかふか吹いて
少しだけ 空を向いて
自転車に乗ってたら
たぶん
わたし
もしかして
出会う前かもしれなくて
じゃなきゃ もう一度
生まれた後かもしれないけど
口笛といっしょに
うたってくれたら
振り向くよ
にっかり
たまご
うっかり
だきとめてしまった
あんまり しずかに
あんまり しぜんに
あなたは
あずけていったから
まだ かえらないたまごだ と
おもったものは
だんだん あたたかく
だんだん やわらかく
ふくらんで
あなたが
むかえにこないまま
うでのなかで たまごが
かえったら
なにをたべる いきものの
わたしは
おかあさんになるんですか
ゆめか
くもか
わたがしくらいなら
つかまえてあげるつもりです
2020年9月4日金曜日
ざわざわ―こども文学の実験5
ざわざわ―こども文学の実験5
草創の会編 2020年9月30日発行
ISBN978-4-905036-23-4 C0095 定価:本体1200円+税
表紙絵:大井さちこ
特集 「赤い鳥」創刊100年を越えて
目次
特集 「赤い鳥」創刊100年を越えて
『赤い鳥』の童謡運動の今日的意義について 畑中圭一
みやぎの『赤い鳥』『おてんとさん』と鈴木道太 宮川健郎
『赤い鳥』を今につないで 藤田のぼる
佐藤義美と『月の中』 矢崎節夫
「この道」と白い時計台 内田麟太郎
まど・みちおの詩の世界 尾上尚子
『赤い鳥』出身の詩人 与田凖一と巽聖歌 吉田定一
「赤い鳥」と小川未明 小川英晴
「赤い鳥」を支えた二つの個性 織江りょう
詩人たちの横顔 菊永 謙
記憶の中の清水たみ子さん 三谷恵子
『赤い鳥』投稿詩人 真田亀久代 山本なおこ
わかると 嬉しくて おがたえつこ
光のみえる詩 藤 真知子
唱歌、『赤い鳥』、思うこと 徳升寛子
北の国の投稿詩人 和泉幸一郎 江森葉子
清水たみ子の詩
風とうさぎと貝がらと 小林雅子
赤い実を食べた いとうゆうこ
まど・みちおの完璧 大竹典子
まど・みちおさんと
周南市美術博物館 林 瀬那
童謡
おがた えつこ あさ
関原斉子 はるの木
佐藤雅子 カナブン ブン
矢崎節夫 ぽちと ぼく
宇部京子 ぼくと月
織江 りょう とりになった ひ
西村裕見子 ちょっとだけ
大竹典子 だれもいない日
二宮龍也 涙を拾いにやってきた
吉田 定一 はえさん
詩作品Ⅰ
野田沙織 はるのたより
吉田享子 しずく
さき あけみ ひみつ
藤 真知子 きみのなかには
たかはし けいこ 五月/帰り道
山本なおこ カマキリ
いとう ゆうこ よじのぼる
井上良子 ココよココよ
林 木林 ひとふわ
みもざ すみれ ツーン と
清水ひさし なぞなぞが苦手な人へのなぞなぞ詩/蚊取り線香/走り高跳び
詩作品Ⅱ
松山真子 こがらしいちばん
江口あけみ 大雪注意報
久保恵子 霧の朝
名嘉実貴 しずくちゃん
岩佐敏子 「こんばんは」いろいろ
岩本良子 寒施行
三谷恵子 冬の使者
あきもと さとみ きめたの
山田よう ふりこゆらゆら
詩作品Ⅲ
内田麟太郎 少年/わたしが
村瀬保子 てあて
はたち よしこ しーん/夏
田代しゅうじ 路地裏
菊永 謙 夢のかけら
千田文子 かいつぶり
津川みゆき 風の後れ毛/やまゆり
小泉周二 月に向かって/さりげなく
谷萩弘人 蝉
下田喜久美 ストック
小野 浩 点滴ポール
まえだ としえ ゆうぐれ
楠田伸彦 太 陽(俳句)
山中利子 ある写真
創作 オレたちの始業式 高橋秀雄
漫画 楽寛さん 徳升寛子
連作「あらわれしもの」⑤ あらわれしもの・四姉妹 最上一平・作(村山里野・絵)
エッセイ―〈歌のある風景〉
童謡の宝庫、信州・松代 海沼松世
海辺の町の夭折の詩人 小川英子
おめでとうがいっぱい─三鷹のお誕生日会のこと─広松由希子
三木卓の詩を読む─「行進」「系図」を中心に─ 宮野マチ
ことば荘便り5 ガマ吉の春 小林雅子
ざわざわ投稿作品・選評
執筆者紹介/編集後記
2020年5月3日日曜日
松山真子『だれも知らない葉の下のこと』
詩集 だれも知らない葉の下のこと
2020 年5 月5 日 発行
著 者 松山真子
画 こがしわかおり
A5変形 上製本 84ページ 定価:本体1200円+税
ISBN978-4-905036-22-7 C0092
著者 松山真子
一九四五年生まれ。信州中野市で育つ。詩集『こんぺいとう』星の環会『詩集﹁さ
よならさんかく・またきてしかく』北信エルシーネット社など。日本児童文学者協会会員。
画家 こがしわ かおり
一九六八年生まれ。埼玉県育ち。作絵に『おうちずきん』(文研出版)など。絵に『料理しなんしょ』(偕成社)『ダジャレーヌちゃん世界のたび』(303BOOKS)、詩集『ぼくたちはなく』(PHP研究所)『魔女のレッスンはじめます』(出版ワークス)など。
HP http://www.pagoda-house.net/
帯より
だれも知らない葉の下には、だれかがいるのです。そっと さがしてみたくなります。
松山さんの詩には、人びとの暮らしや 動物たちの不思議なつぶやきの楽しさがあり 作者の心やさしさが広がっていきます。 はたちよしこ
詩集より
霧の中 松山真子
草やぶを抜けると
そこは一面の乳白色の霧の中
家に帰る道が見つからない
さっきまであったものが
すっかり消えている
大きな魚が泳いでくる
海藻が揺れている
海の中の乳白色
わたしはどこ
わたしの家はどこ
とおいところ
海の底にはりついている
小さな魚が
ずっとずっと昔の
わたしだと言いはっている
ほんとうは
きれいな山の清流が好きだった
ほんとうは
だれもいない谷川で子育てをしたかった
ほんとうは輝く青色とオレンジ色の羽を
だれにも見られたくなかった
でも
いつから好きになってしまったのだろう
オタマジャクシがいっぱいいる
公園の池を
子どもたちの口に小魚を入れながら
ほんとうの自分はどっちなんだろう
と
考えている
とめないで
きょうは ただ
おもいっきり なきたいんだ
ちょっとちょっと
ほんきでやるきですかい
そのふるえるスリッパで
座るとすぐにねむってしまう
そんなふしぎな椅子があると
ばあちゃんが話してくれた
それを
ずっと さがしているんだって
このごろのばあちゃんは
夜ねむれない
風が雨戸をゆらしても
犬のタロウが鳴いても
すぐに起きてしまうのだと
幼稚園のとき
いつも送り迎えしてくれたばあちゃん
公園の回転ジャングルするときも
いつもだまって待っていてくれた
座るとすぐにねむってしまう椅子は
どこにあるのだろう
さがしてきて
ばあちゃんに座らせてあげたい