チョコレート 山本純子詩集
2021 年10 月31 日 初版発行
著 者 山本 純子
装幀&イラスト ルイコ
四六判 上製 本文96ページ
ISBN 978-4-905036-29-6 C0092 定価1540円(本体1400円 税140円(10%))
ことし初めて見たトンボ とか
赤くなってきたグミの実 とか
ともだちに教えたいこと
いくつもみつけて
向こう岸で会ってから
こんなもの みつけたよ
って
話し合う(作品「湖」より)
著者略歴
山本 純子(やまもと・じゅんこ)
1957 年 石川県生まれ。
2000 年 詩集『豊穣の女神の息子』花神社
2004 年 詩集『あまのがわ』花神社(第55 回H 氏賞)
2007 年 詩集『海の日』花神社
2009 年 句集『カヌー干す』ふらんす堂
2009 年 朗読CD『風と散歩に』
ミュージカルひろば「星のこども」発行
2014 年 少年詩集『ふふふ』銀の鈴社
2017 年 俳句とエッセイ『山ガール』創風社出版
2018 年 詩集『きつねうどんをたべるとき』ふらんす堂
2019 年 少年詩集『給食当番』四季の森社
詩集から
チョコレート
石だんがあるから
ジャンケンをする
わたしが つづけて負けて
友だちが どんどん先へ行って
さいしょはグー の声が
どんどん大きくなってしまう
いま勝った分の
チョコレート あげるよー
って いわれて せっかくだから
ミ・ル・ク・チ・ヨ・コ・レ・イ・ト
って 石だんをのぼった
ポスト
ポストのなかの
手紙たち
どちらまで
と言い合って
おや そんな遠くまで
北へ 南へ
それぞれ みんな ちりぢりですね
と言い合って
また だれか落ちてきた
どちらまで
すてきな切手を つけてますね
あした
あしたって
いま どのへんにいるのかな
夜中を ずっと歩いてくるのかな
まっくらで
石につまずいたりしないかな
木にぶつかったりしないかな
川へころげおちたりしないかな
あしたが ちゃんとやってくるか
心配で
いつものように ねむれないよ
あしたって
遠足が あること
知ってるのかな
ちびた えんぴつ
ちびた えんぴつを
土に うめて
水を やって
ときどき 大きくなあれ
って 声をかけたら
芽
が 出て
するする のびて
えんぴつの木になる
なんてこと ないかなあ
えんぴつの花が 咲いて
(きっと 白い花だよ)
えんぴつの実が なって
ちびた えんぴつが
もとの 長いえんぴつを
いっぱい 実らせるんだ
赤えんぴつの
ちびたのを うめたら
秋には
えんぴつの木が
きれいな 赤い葉っぱを
そよがせるだろう
わたしはびわ湖のそばに住んでいます。そのびわ湖、深呼吸する、って聞いたことありますか。ちょっと説明しますと、びわ湖の北部では、冬に表面近くの水が冷え、冷たい水は重いので湖の底に沈みます。すると底の水が押し上げられて、表面近くの水と底の水がひっくり返ることになります。そのことを、全層循環と言います。冷たい水は酸素をたくさん含んでいますので、水の循環は酸素の循環にもなり、それで、全層循環は〝びわ湖の深呼吸〟とも言われています。びわ湖が深呼吸すれば、湖底で生きる生物たちにたっぷり酸素が届くのです。
わたしの好きな詩句たちも、大げさな言い方かもしれませんが、わたしの心に全層循環を起こすように思います。思い浮かべるだけで、心の底まで酸素が行きわたり、深々と新鮮な空気を吸ったような気分になるのです。
わたしはわたしの詩を書きながら、ほかのたくさんの詩人たちのすてきな詩句に、これからも出会っていきたいな、と思います。(著者あとがきから)
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