『詩集たたかいごっこ』小泉周二
2020 年
4 月
15 日発売
A5変形 上製本
136ページ 定価:本体
1500円+税
ISBN978-4-905036-21-0 C0092
父となった小泉周二の子育て詩集
著者小泉周二
一九五〇年、茨城県那珂湊市生まれ。十五歳の時に先天性進行性の難病「網膜色素変性症」と診断され、将来は失明の可能性が高いということを知らされる。以来、生きていく支えとして詩を書き続ける。茨城大学教育学部卒。
詩「カンソイモ」で日本児童文学新人賞、詩「あとえ」で童謡ダイエー賞、詩「いもむし」で毎日童謡賞、詩集『太陽へ』で日本童謡賞、三越佐千夫少年詩賞。著書 詩集『放課後』(一九八六年)、『こもりうた』、『太陽へ』(一九九七年)、『現代児童文学詩人文庫9小泉周二詩集』(二〇〇四年)、『小さな人よ』(二〇一〇年)、その他。
帯より
父親と子どもというのはなんだか本当っぽくない。まわりがそう思うだけでなく、
自分でもなんだかそんな気がするのだ。ただ、正直なところ、だからこそ「がんばってる
な、おれ」と思うことができる。それは男の甘えかもしれないが、やはり自分を多少はほ
めてあげないと、なかなかやっていけないのだ。(藤田のぼる氏の解説より)
詩集より
ファンタジー
パパ かきごおり つくって
と言うので
はい いちごとメロンとレモン どれがいいと聞くと
うーん あかいの
と言う
はい いちごですね
カシャカシャカシャカシャ シロップ ジャー
はい どうぞ
手の平をおわんにして差し出すと
片手でつかんで自分の口に持っていく
おいしい
と聞くと
あまーい
と答える
パパ パン屋さんに行ってくまさんのパン買ってくるから待って
てね
と部屋を出ていく
はい 気をつけてね
と送り出す
ドンドンドンと足音が遠ざかり
ドンドンドンと足音が近づいてくる
ただいまー
お帰り 早かったね
と言うと
パン屋さんおやすみでくまさんのパン買えなかったの
と言う
うーん そうだったのかあ
許してくれない
きのうもおとといも聞いたのに
美空はまたきょうも聞いてくる
パパ 黄色いチューリップ どうしたの
パパがね まちがえてちらしちゃったんだよ
伸びた雑草を抜いたときに
いっしょに花びらをむしってしまったらしいのだ
毎日美空は同じことを聞いてきて
毎日僕は同じように答える
美空は黄色いチューリップが好きだったのだ
海の四季
さよさよ さよさよ さよさよさ
静かに寝息を立てている
とろんとした春の海
ろろろん ろろろん ろろろんろ
でっかい声で歌ってる
ぱっとした夏の海
さささあ さささあ さささあさ
思い出話が続いてる
しんとした秋の海
ごごごお ごごごお ごごごおご
誰も来るなと叫んでる
どんとした冬の海