2020年4月13日月曜日

『詩集たたかいごっこ』小泉周二 

『詩集たたかいごっこ』小泉周二  2020 4 15 日発売

A5変形 上製本 136ページ 定価:本体1500円+税
ISBN978-4-905036-21-0 C0092

父となった小泉周二の子育て詩集

著者小泉周二
一九五〇年、茨城県那珂湊市生まれ。十五歳の時に先天性進行性の難病「網膜色素変性症」と診断され、将来は失明の可能性が高いということを知らされる。以来、生きていく支えとして詩を書き続ける。茨城大学教育学部卒。
詩「カンソイモ」で日本児童文学新人賞、詩「あとえ」で童謡ダイエー賞、詩「いもむし」で毎日童謡賞、詩集『太陽へ』で日本童謡賞、三越佐千夫少年詩賞。著書 詩集『放課後』(一九八六年)、『こもりうた』、『太陽へ』(一九九七年)、『現代児童文学詩人文庫9小泉周二詩集』(二〇〇四年)、『小さな人よ』(二〇一〇年)、その他。

帯より
父親と子どもというのはなんだか本当っぽくない。まわりがそう思うだけでなく、
自分でもなんだかそんな気がするのだ。ただ、正直なところ、だからこそ「がんばってる
な、おれ」と思うことができる。それは男の甘えかもしれないが、やはり自分を多少はほ
めてあげないと、なかなかやっていけないのだ。(藤田のぼる氏の解説より)


詩集より

ファンタジー

パパ かきごおり つくって
と言うので
はい いちごとメロンとレモン どれがいいと聞くと
うーん あかいの
と言う

はい いちごですね
カシャカシャカシャカシャ シロップ ジャー
はい どうぞ
手の平をおわんにして差し出すと
片手でつかんで自分の口に持っていく

おいしい
と聞くと
あまーい
と答える

パパ パン屋さんに行ってくまさんのパン買ってくるから待って
てね
と部屋を出ていく
はい 気をつけてね
と送り出す

ドンドンドンと足音が遠ざかり
ドンドンドンと足音が近づいてくる

ただいまー
お帰り 早かったね
と言うと
パン屋さんおやすみでくまさんのパン買えなかったの
と言う
うーん そうだったのかあ


許してくれない

きのうもおとといも聞いたのに
美空はまたきょうも聞いてくる

パパ 黄色いチューリップ どうしたの

パパがね まちがえてちらしちゃったんだよ

伸びた雑草を抜いたときに
いっしょに花びらをむしってしまったらしいのだ

毎日美空は同じことを聞いてきて
毎日僕は同じように答える

美空は黄色いチューリップが好きだったのだ


海の四季

さよさよ さよさよ さよさよさ
静かに寝息を立てている
とろんとした春の海

ろろろん ろろろん ろろろんろ
でっかい声で歌ってる
ぱっとした夏の海

さささあ さささあ さささあさ
思い出話が続いてる
しんとした秋の海

ごごごお ごごごお ごごごおご
誰も来るなと叫んでる
どんとした冬の海




2020年2月7日金曜日

まえだとしえ『天気予報』


まえだとしえ 『天気予報』 第三詩集

2020125日発行 四季の森社 定価1200円+税

A5判変形 上製本 96ページ 絵 まえだとしえ

 ISBN978-4-905036-20-3 C0092




母や父、遠い日の友

故郷への限りない思い出を通して

<無償のやさしさ>に出会う詩篇たち

菊永謙(詩人、児童文学評論家)




まえだとしえ

加賀白山山麓の小集落、東二口(ひがしふたくち)

生まれ。鶴来(つるぎ)高校卒。金沢大学医学部付

属看護学校卒。同付属病院勤務。金沢の詩誌「笛」

同人となる。結婚後、上京。子育ての時期、児童文

学者・岩崎京子先生の文庫に親子でお世話になる。

児童文学者協会の通信講座にて川村たかし先生の指

導を受ける。同人誌「アルゴル」「森」「ひなつぼし」

「木曜童話会」「虹」「少年詩の学校」などに詩、エッ

セイ、童話を発表。詩集『た・か・ら・も・の』(リー

ブル 2007年)。日本児童文学者協会会員。





詩集より









大きなおおきなふしぎは

山のくぼみから わきでる水のこと



雨が何日もふっていないのに

水はとぎれることなくあふれ

幼いわたしは しゃがんで

ふたつの手のひらですくって

なんども 口にはこんだ



かすかにあまくて おいしい

清らかな水を生む山並みは

遠い遠いふるさと



都会のざわめきと

孤独のよせあつまりの中

さまよう心が

本当の水を求めています



とぎれることのない 深い山並みの

わき水を 求めています





ざくろの花のさくころ



ひとむかしも ふたむかしも

もっともっとむかし

ゆりおばあちゃんのほほが

ふっくらと うすべにいろだったころ

いくどもいくども あめのなかで

みつめたはながありました



ゆりおばあちゃんは いま

ろうじんほーむの なかにわで

あめのなかに ひとりたたずみ

はつこいのひとと おはなしをしています



むすめのころ

きはずかしくて つげられなかったことも

すらすら いえます



少女にもどった ゆりおばあちゃんの目には

つややかなみどりのなかでくっきりとさく

ざくろのはなしかみえません

ゆりおばあちゃんのみみには

はつこいのひとのこえしか きこえません



あめのなか ことしも

朱色のはながさいています









心もとなくて 目をとじる

見えない糸を たぐっていくと

はるか向こうに

ほほえんでいる 母がいる



母のうしろは

海のような

土のぬくもりのような

月影のような

ひなたのような―



 なに なーんもしんぱいいらんけんねえ

 ひとっちゅうもんは 弱いようで強い

 ひとそれぞれ 時代時代 一本道を

 のぼったりくだったりするもんよ

 こころんなかの おくのおくのかすかな

 のぞみを こんきよう じぶんのてで

 まもりそだてながらな



―はいっ ありがとう! かあさん

私の中の 少女の声が聞こえてきます


2020年1月5日日曜日

まえだとしえ『かくれんぼ』


まえだとしえ 『かくれんぼ』

20191225日発行 四季の森社 定価1200円+税

A5判変形 上製本 112ページ 絵 大井さちこ



やさしく温かな気持ちがいっぱいあふれている

まえだとしえさんの詩集は私の心の栄養食です。

岩崎京子(児童文学作家)



まえだとしえ

加賀白山山麓の小集落、東二口(ひがしふたくち)

生まれ。鶴来(つるぎ)高校卒。金沢大学医学部付

属看護学校卒。同付属病院勤務。金沢の詩誌「笛」

同人となる。結婚後、上京。子育ての時期、児童文

学者・岩崎京子先生の文庫に親子でお世話になる。

児童文学者協会の通信講座にて川村たかし先生の指

導を受ける。同人誌「アルゴル」「森」「ひなつぼし」

「木曜童話会」「虹」「少年詩の学校」などに詩、エッ

セイ、童話を発表。詩集『た・か・ら・も・の』(リー

ブル 2007年)。日本児童文学者協会会員。





詩集より



ママの七変化   まえだとしえ



おっかないママ

あかおにのようなママ

ぼくがおいたをしたときのママ



おんなのこのようなママ

ガールフレンドのようなママ

いっしょにドレミのうたをうたうママ



やさしいママ

かんごしさんのようなママ

びょうきのぼくをだっこするママ



おとこのこのようなママ

ジーパンのにあうママ

ぼくとはらっぱであそぶママ



きゅうしょくのおばさんのようなママ

コックさんのようなママ

ごちそうをつくるときのママ



パパにいってらっしゃい というママ

パパにおかえりなさい というママ

パパだけのおくさんのママ



だけど どのママも

みんなみんなぼくのママ

ぼくがおにいちゃんになっても

おとなになっても

ずっと

ずーっと ぼくのママ







さがしもの   まえだとしえ



おふろばで したぎをあらうこと

三さいのとき ははからおそわりました

はんかちーふのほしかた

ようちえんじだい ぱんぱん たたくのよって

ちひろせんせいにおそわりました

せんたくきのつかいかたも

いつのまにか おぼえました

ははのせたけも せんせいのせたけも

とっくにこしたいま

たいがいのことは

ひとりでかいけつできるのに

つかれ

よごれたこころがあらえません



とかいのちいさなそらのした

まふゆのゆうげしきに

ちょっぴりそまった こころをひきずり

こころのあらいかたをさがしながら

あるきつづけています







おおきに ありがとさん   まえだとしえ



―おじいちゃん さむくなってきたね

  はんてん どうぞ

―おお おおきに ありがとさん

えんがわで絵をかいている おじいちゃん

べレー帽が よくにあってる



―おじいちゃん あついお茶 どうぞ

―おおきに ありがとさん

  ほんに あんたは いい子じゃ

おじいちゃんは かぞえきれないほど

おおきに ありがとさん って言ってくれる

おじいちゃんの体の中には いったい

どれだけ おおきに ありがとさんが

入っているのかな?

聞くたびに 心がほっこりしてくる



夏の終わり おなかの手術のあと 突然

天国へ行ってしまった おじいちゃん

かきかけの絵をかかえ えんがわから

一番星に よびかけます

―おじいちゃーん

  いっぱいいっぱい おおきに

  ありがとさん







マムシ   まえだとしえ



草むらで カサッと小さな音がした

一瞬 チコの手にした棒の先が

マムシの頭を きっちり押さえた



夏休みの登校日 家への帰り道

あつい日差しの下

麦わら帽子をかぶったチコの頭の中では

となりのおばさんの言葉が

ぐるぐる まわっている



  (チコちゃんちの おかあちゃん、

   なくならはったおとうちゃんの分まで

   働かはるでなあ

   この暑さの中、あんな細ほそこい体で

   むりのしすぎやが

   まっ マムシ4 4 4 の焼いたのでも食べて

   二、三日 ゆっくりなさると

   じきに ようなりなさると思うが……)



チコの手は 一度だけ見たことのある

次吉おじさんの手さばきをまねて

みごとなスピードで皮をはぎ

まるで 手品師のように

棒切れに桜色のくねくねを巻きつけた



すぐそばの林道の上手では

竹筒の先から岩清水が流れ落ちている

チコは 冷たい水でゴシゴシ手を洗い

顔をザブザブ洗い 口をすすいだ

   (おかあちゃんをよろしくお願いします)

くねくねさんに 頭をさげてたのんだ



その晩 チコの家の大きないろりには

赤あかとした炭火があった

話を聞いた次吉おじさんが自分のマムシと

チコのくねくねさんを並べて焼いている

ミミズにしりごみするチコちゃんが……

  あのかいらしチコちゃんが……

  ようもまあ こんな立派なタイショウ4 4 4 4 4

  しとめたもんやなあ どっちにしても

  おかあちゃん 一気にようなりなさるわ

となりのおばさんの顔が

なみだでぐしゃぐしゃになっている



―ほんにのう チコっちゅう子うは

  思いもかけんことをする子じゃ

チコのおばあちゃんも さっきから

袖で涙をぬぐっている





そのころ

おかあさんも寝床で涙をぬぐっていた

チコは おかあさんの手をにぎったまま

えびの形にまるまって

とっくの昔に ねむりこんでいた

もとの 甘えんぼうにもどって

              *となりのおばさんがタイショウと

               呼んだのは マムシではなくてヘビのこと。

2019年11月28日木曜日

『翼をつくる金魚たち~千田ふみ子作品集』


『翼をつくる金魚たち~千田ふみ子作品集』


A5判上製本204ページ 定価1500円+税

ISBN978-4-905036-18-0 C0093

 
帯文より
「昭和」という時代をけなげに、たくましく生きていた子どもたちを活写する千田ふみ子の童話集(菊永謙)

 

著者 千田ふみ子

大石真に師事。著者に『エンゼルうさぎ空をとぶ』など

 

絵  浜田洋子 

武蔵野美大、油絵科卒。児童書の挿画、絵本の仕事を中心に活躍。

 

内容目次

 

Ⅰ 童話

はしをわたって

サトコのおにぎりや

がまおばさん

よこづなくん

ヤスさんといたちの村

フーくんのやきゅう

しょうきゃくろにあつまれ

かいがんでんしゃネム号

子猫の赤いランドセル

 Ⅱ 詩 エッセイ 創作

かいつぶり

ぼくの小鳥

初空襲の記憶

魅せられた一冊 ミシェル・マゴリアン作『おやすみなさいトムさん』

寒夜

翼をつくる金魚たち

2019年8月7日水曜日

山本純子詩集 『給食当番』

詩集 『給食当番』        

2019825日発行発売

著者 山本純子

イラスト装幀 ルイコ

ISBN 978-4-905036-17-3

四六判64ページ並製 定価800円+税

詩人山本純子がこどもに読んでもらうために書き下ろした小詩集

 
著者 山本純子


2000 詩集『豊穣の女神の息子』花神社

2004 詩集『あまのがわ』花神社(第55H氏賞)

2007 詩集『海の日』花神社

2009 句集『カヌー干す』ふらんす堂

2009 朗読CD『風と散歩に』

      ミュージカルひろば「星のこども」発行

2014 少年詩集『ふふふ』銀の鈴社

2017 俳句とエッセイ『山ガール』創風社出版

2018 詩集『きつねうどんをたべるとき』ふらんす堂

 

この小さな詩集の中に、あなたのふだんの生活やふと想像することと、ひびき合う作品があったでしょうか。もし一つでもあったら、ぜひその詩を声に出して読んでください。声にすると、詩はいっそうきげんがよくなります。 (山本純子;あとがきから)

 

作品抄 (本詩集から)

 

  ってこと

 

すき きらい

すき きらい って

マーガレットの花びらを

むしるより

 

くつを

ポーンと 空へけり上げて

うらなおう

 

落ちたくつが 横向きだったら

くつが うらない初心者で

ちょっと なやんでる ってこと

 

 

  黒ネコ

 

黒ネコが 音もなくやってきて

ろうかの出入り口から

すっと 中をのぞきこむと

そのまま 音もなく去っていった

 

きっと 気になったんだ

算数のドリルをといている

わたしだって

さっきから 気になっている

 

ろうかのおくの

給食室から ただよってくる

シチューのにおい

 

 

ワリバシ先生

 

家に ワリバシが余っていたら

ワリバシ先生のところへ持っていく

 

職員室の

ワリバシ先生の引き出しには

ワリバシが ぞくぞく集まっていて

 

うわさでは 真夜中に

ワリバシたちが 剣の試合をするらしい

 

お弁当の日に おはしを忘れて

ワリバシせんせー って大声で呼ぶと

本名 大橋先生が

パシッ と一ぜん わたしてくれる

 

 

山わらう

 

白でも 黄色でもない

ひよこの色

 

えだから めぶいた 葉っぱには

緑に ひよこの色が まじっている

 

風が ふくと

葉っぱのひよこが くすぐったがって

ひよひよ ひよひよっと わらう

 

葉っぱのひよこたちが

いっせいに くすぐったがって

山わらう

 

 

〝山わらう〟は春の季語です。春の山の明るい様子を表したことばです。

2018年5月9日水曜日

第22回三越左千夫少年詩賞に『ともだちいっぱい』 田代しゅうじ詩集の受賞が決まりました。

第22回三越左千夫少年詩賞に『ともだちいっぱい』 田代しゅうじ詩集の受賞が決まりました。

田代しゅうじ
鹿児島県生まれ。一九八二年 「少年と海」「ねこと少年」で第二回児童文化の会童詩童謡賞、「おじいさんのたばこ売り」で児童文化の会創立三十周年記念・児童文化の会童詩童謡賞受賞、詩集『少年と海』で第十六回埼玉文芸賞を受賞。主な著書 詩集『少年と海』(けやき書房) 『野にある神様』(てらいんく) ほかに『ふるさとの民話』『現代おばけ民話』など共著多数。詩誌『みみずく』同人。
 
http://sikinomorisya.blogspot.jp/2017/03/blog-post.html

2017年11月11日土曜日

ざわざわ4ができます

ざわざわ4がようやくできます。

ざわざわ─こども文学の実験 第4号

2017年1115日 発行

編集 草創の会  発行所 四季の森社

定価 本体1200円+税 A5並製 336ページ

ISBN978-4-905036-16-6 C0095

特集 神沢利子   

神沢利子アルバム

神沢利子さんに聴く(聴き手・いとうゆうこ)

 ─幼年時代は今もわたしのまわりに 

 「いないいない国へ」の幻郷 吉田定一

 幼年期からの根源的な問い きどのりこ

 ほか

小特集〈心を揺さぶられた詩・童謡〉

 谷萩弘人 いずみたかひろ 宇部京子 ほか

連作「あらわれしもの」④ あらわれしもの・ひめりんごちゃん 最上一平

エッセイ―魅せられた一冊─『エルフギフト 上:復讐の誓い 下:裏切りの剣』小川英子

詩はどこにあるか2『詩の絵本』の試み 宮川健郎

ほか
 
※なお、発行が年に一度のぺースになっておりますので、申し訳ございませんが今後の定期購読はお受けできません。今後の発行のご連絡はメールできますのでご希望の方はメールでその旨ご連絡ください。よろしくお願いいたします。